クレヨン

 

部屋を片付けていたら、幼稚園の頃のクレヨンが出てきた。
長さはまちまちで、やっぱり白が一番長かった。
特有の油臭さに顔をしかめつつ、その白いクレヨンを手に取る。
友達は、間違えたところを消すのに使っていたようだが、私は逆に汚くなると思って使わなかった。
…白は、綺麗にしてくれるのだろうか?
隠してくれるのだろうか?
無かった事にしてくれるのだろうか?
わからない。
私はその白いクレヨンで私を上から塗りつぶしてしまいたい衝動に駆られた。
私がもし、絵の登場人物なのだとしたらそれも出来たかもしれない。
青い空、赤い太陽、緑の草原、笑っている人達、白い私。
青い空も、赤い太陽も、緑の草原も、笑っている人達も、全部白く塗りつぶしたら。
何も無い世界が出来たら。
私はそこに溶け込めるのだ。

 

----------------------------------------

消せるものなら消してしまいたい。

2003.7.25